時のエレベータ

 仕事にヘトヘトになったハゲトは、駅に向かって田んぼ道をトボトボと歩いていた。辺りはもうすっかり暗くなっていた。広がる田んぼの先に、暗闇に浮かぶ駅舎の明かりが見えていた。

 

 近くまで到着したハゲトは、二階にある改札口を見上げた。二階に上がるためには、階段と、もう一つは稼働して何十年になるか分からないエレベータがあった。そしてハゲトは、うす汚れた上向きの矢印ボタンをガチャリと押した。

 

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凡人宣言

 

バカな男がまたバカなことを思い付いた。
 
─ 凡人宣言 ─
 
いや、元々、凡人だった。
 
大哲学者や宗教者にでもなるつもりだったか。
 
歴史に名を残したかったのか?
 
そんな高尚なことを考えても、自分には無理。無駄。
 
自分は凡人。
 
そのことを忘れてはいけない。
 
凡人で何が悪い。
 
凡人でもやれることはある。
 
─ そして、バカを見る人生を。
 
今まで上から目線でバカにしていた凡人ども。
 
それは、自分だ。仲間だ。同類だ。
 
─ 自分は、独りじゃない。
 
みんな、足掻きながら生きている。