自分探し? 新しい発見? 刺激?
まぁ、そんなものを得ようとして、旅に出るのかもしれない。
それはつまり、自分に何か、タスクのようなものを課すことになる。
もともと、旅にアテはない。
アテを作って、旅に出る。どこかに行こう、あれを見よう、あれを体験しよう…
つまり、旅先でスタンプラリーをするようなもの。
旅先でスタンプラリーをするのは、楽しいものだ。タスクが与えられ(自分でタスクを得て)、そのタスクをこなしていく。その途中では色々と見聞きし、スタンプを押す場所を探し、発見する。そうすることで、鮮明に旅の記憶が残る。そうすることで、旅は楽しさを増す。
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人生についても、そうではないだろうか?
人生に、もともとアテなんてない。目標、目的を作って、人生を歩む。
一方で人生とは、生きていければそれだけで良い。余裕のない時は、生きていくだけで精一杯なのだ。そして逆説的にそういう時は、生きる喜びを直に味わえる。生き抜くこと自体に、喜びを感じる。
余裕があるから、生きていく以外の他の目標、達成しようとする何かを作ることができる。
はっきり言って、人生にアテは必要ない。
生きている、それだけで喜びになるはずだった。
もちろん、旅に出る必要も元来ない。
そう考えると、人生はシンプルだ。目的だの目標だの達成感だの、そういうことを求めるから複雑になる。人生を複雑にしているのは、自分自身。
この現代の日本において、生きていくだけの必要なものは全て揃っている。血の滲む苦労をしなくても、生きる幸せを噛み締めることが可能なはずだ。屋根と壁のある家(それがどんなに小さな家でも)、美味しい食事(それがチープな物でも)、いつでも飲める水…
それなのに、なぜ、わざわざ人生のスタンプラリーを始めるんだ?
楽しいから。
アテは作るもの。
最初からあるわけではない。
絶対に必要なものでもない。
人生のスタンプラリーに疲れたら、その時はアテのない旅に出たらいい。