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ナスカは春風の吹く頃、旅に出た。列車を待つプラットフォームで春の匂いを感じ、暖かさを感じ、風がナスカの髪を撫でていた。居るだけで気持ちよく、その心地よさを黙々と味わっていた。
ナスカは島に行くための列車に乗った。しばらくするとトンネルの中に入った。窓の外は暗く、鉄の車輪と鉄のレールがこすれる音がトンネルの壁に響き、車内に激しい音が入り込んできた。
“白い蝶‐1:記憶の海の島” の続きを読む
ナスカは初夏の明るい夕方、空が映り込んでいる水田の間を歩いていた。
アスファルトの黒く硬質な直線が、水田の間をまっすぐに伸びていた。
ナスカの周り一面には、水が張られた何枚もの水田が広がっていた。風はなく水田はピタリと静止していて、昼間と夕方の間の空を寸分の狂い無く映し出している。空の色と、水の色と太陽の光が混ざってそれは、何枚も隙間なく敷き詰められていた。
“世界の起点” の続きを読む
これは、伝染病が世界に流行する前の話し。
ナスカはお金を貯めて、念願の豪華クルーズ船の一週間の旅に出かけた。10万トンを超える超大型船で、そこでは艶やかで怠惰な生活が待っているはずだった。
“幻想の豪華客船” の続きを読む