サラリーマンの、ある辛い一日

会うなりに
がっかりされて
  やるせなし
 
 上司無しでの
    出張先
 
 
 
 
これは辛い…
 
自分ではお話にならないということを思い知らされ、それでも話し続けるという、苦痛。
 
 
 

朝の時間の使い方

 
わらじ虫
子らとの時間と
    出社時間
 
どっちを取るんだ
  サラリーマン
 
 
 
 
 
 
 子らが、わらじ虫をいじって遊んでいるのをゆっくり見ていたいが、もう出社時間だ。
 
 会社には間に合うが、電車で座れるか座れないかの微妙な時間。
 
 そして座る方をとってしまったバカな男は、子らとの時間を失って今、後悔している。
 

朝から疲れてんなぁ

「お降りの方は」だろ?
 
鬱の朝
バスのボタンに
   すがりつく
 
ポチッと押しても
 バス止まるだけ
 
 
 
 
 
 朝の通勤バス。降りるときに押すボタンが、助けてくれるボタンに見えるんすよ。
 

ベルトの穴にやられた男

 その男は、大きな会社の会社員だった。やるべき事はやり、何事にも手を抜かず、いつも最大限にパフォーマンスを発揮していた。

 ある日、大勢のお客さんの前でのプレゼンテーションがあった。その直前に、コンビニエンスストアで買った菓子パン類を昼食として食べた。ところが食べ過ぎたのか、腹がきつい事に気付き、ベルトを緩めようと手をかけた。

 そして自分のベルトの穴が、ひどく傷んでいる事に気づいた。

 不摂生により腹が出て、それを無理やり締め付け、酷使されたベルト。ベルトの留め金を無理に通され、楕円形にひん曲がったベルトの穴達。おまけに表面の『ビニールで出来た皮』が穴の周囲で剥げており、下地の茶色のビニールだか紙だか分からないものが見えていた。それはベルトの穴の周辺だけでなく、ベルト全体にその無残なひび割れを晒していた。

 男は唖然としてそれを眺めた。そして、男の前にプレゼンテーションを行った男性が演壇から下りてくるときに、彼のベルトを鋭い目線で見て、自分のベルトと比較した。

 彼のベルトの穴は、正確な円だった。円の周囲の『本革』はピンとしており、剥げているところはどこにもない。真っ黒で、綺麗なままの穴達が並んでいた。見るからに、ちゃんとしたベルトだった。

 男はその事に気付いた瞬間から、絶望的な気分になった。まるで誰かに深い谷底に落とされたように、気分が落ちていった。

 自分がどうしようもなくみすぼらしく、劣っているようにしか考えられないようになった。あいつはちゃんとしたベルトをしている、私はボロボロのベルトをしている。あいつは年相応のものを身に付けている、私はいい年をしてみすぼらしいものを身に付けている…

 その男は『ベルトの穴』に完全にやられていた。小さな小さなベルトの穴に、完膚なきまで打ち負かされていた。直径5ミリにも満たない小さな穴に、全ての自信を奪われた。

 男はオドオドとした様子でプレゼンテーションを行った。目は泳ぎ、どこにも自信を感じさせるものはなかった。

 しかし実際のところ、その男の傷んだベルトの穴など、誰も見ていなかった。誰もそんなことに興味がなかった。

 その男は、ベルトの穴ごときにやられただけだ。