うまくいかないスイッチ

コウタロウは、生き辛さを感じていた。会社の中で出世することも出来ず、だからといって私生活が特に充実していることもなかった。生きていると、うまくいかない事が多過ぎる、まるで、意図的にうまくいかないように仕向けられているようだ、とも感じていた。

コウタロウは良く晴れたある日、気分転換をしようと思い立ち、北の海岸の崖の上、ほんの少し草が生えている場所に座布団を置き、そこに座りこんだ。海の向こうの遠くを見つめ、静かに息をし、薄目になり、自分のココロの中を覗いてみた。

確かに、黒く薄汚れた「うまくいかないスイッチ」が、オンになっていた。。。
すぐ隣に、金色の輪がある円筒状のノブが付いた、「すべてうまくいくスイッチ」があった。

コウタロウはちょっと躊躇した後にそのノブを押し、すべてうまくいくスイッチをオンにした。かわりに、うまくいかないスイッチはオフにした。

全てがうまくいくようになった。今が最高になった。やること成すこと、全てがうまくいく。
しかし不思議なことに、不安に襲われもした。今が最高なので、それ以上は無く、あとは落ちるだけである、という感覚だった。そうなると、うまくいけばいくほど不安になった。

もう一度あの崖の上に行き、座布団に座った。
ココロの中の世界を覗き、「すべてうまくいくスイッチ」をオフにして、そのかわり、「うまくいかないスイッチ」をオンにした。

元の通り、やること成すこと、うまくいかなくなった。でも、今がうまくいかないなら、これからは良くなるかもしれない、という希望を持って生きる、という生き方になった。次はきっとうまくいく、という“希望”を常に与えられた。

それが今の私達の世界である。

もう少し考えた。「うまくいかないスイッチ」と、「すべてうまくいくスイッチ」の両方をオンにしたらどうなるだろう。。。?

両方のスイッチをオンにしてみた。

うまくいくことと、うまくいかないことが交互に、というより、絶妙なバランスで色々なことが起こるようになった。

それも、今の私達の世界である。

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