駅前のカミサマ─【2】大丈夫

もくじ
【1】改札口に立つ老人
【2】大丈夫
【3】次の町へ行かれる

【2】大丈夫

その老人は、疲れた顔で改札を出てくる人々に対して、軽く手をかざしてニッコリと笑いかけています。そして時々、何かを言っているときもあります。雑踏の中なので、何を言っているかは分かりません。そして観察を始めてしばらく経った時、唐突に私に近づいてきて、ニッコリした表情で私と対面し、手をかざしました。私は驚き、観察していることがバレたのかもしれないと思いました。その老人は私に手をかざしながら、「大丈夫、大丈夫っ。」と、言いました。

ああ、この人はこうやってみんなに元気を与えに毎晩ここにやって来てるんだ、と思いました。

私への語りかけが終わるとすぐ、また別の人々に語りかけを続けられました。私はしばらくその場に立ち尽くした後、そのお方にお辞儀をするように軽く頭を下げ、帰路につきました。

その夜から私は、そのお方に対する感じ方がまるで変わりました。今まで大変失礼であった、と思うようになりました。そのお方に会うことが、いつのまにか毎晩の楽しみとなりました。いつもゆっくりと構え、満面の笑みをたたえ、私たちに「あなたは大丈夫、大丈夫。」と、語りかけてくれています。私はいつも心の中で、お礼を言うようになりました。

またある夜、そのお方はいつものように手をかざされるのではなく(あの日以来、私はしっかりとそのお方を見るようになった)、同じ位置に立って、「わんぱくっ、わんぱくっ」と、ずっとおっしゃっていました。寒い中、町の人々に元気を与えてくださっているのだ、と感じました。

つづく
 
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